男性3 患者さんの声-60代男性-

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インタビュー対応:本人

急性心不全と診断され救急搬送されました

ある晩、突然とても息苦しくなりました。寒気がし、滝のような汗が流れ、息苦しさは止まらず、自分はこのまま死ぬんだなと悟りました。そういう人生なんだろうと受け入れたのですが、翌朝を迎えました。
せっかく助かった命だからもう少し生きてみようかと、歩いて弘前総合医療センターへ行きました。そして、急性心不全と診断され、すぐに弘前大学医学部附属病院へ救急搬送されました。
弘前大学病院で救急治療を受けた後、しばらくして一般病棟に移動しました。

一般病棟に移動してから、WCDの説明を受け、着用を開始しました。私は日本で8番目のWCD着用患者でした。
トイレなどどこにでも着の身着のまま単独で行けますし、ベストは苦しくもなく暑くもなく、負担も違和感も全然なかったです。

「戻った!」

着用4日目の睡眠中にストーンと落ちる感じがあり、息苦しくてもがき苦しみながら、機械から発する「レスポンスボタンを押してください」という音を聞きました。
ボタンを押そうと手を伸ばした瞬間、体が30㎝ほど跳んだ感じがしました。

目を開けると、「戻った!」と4人の看護師が自分を見ていました。
治療アラームが鳴ったため看護師が集まり、見守っていたとのことでした。
おそらく手を伸ばした時に意識を失ったのでしょう。
電気ショックの痛みは全くありませんでした。
急に浮いた感じがしたのみです。

日本初の患者


翌日の教授回診で、教授から「この方は日本で初めてWCDの除細動治療で救命された方だよ」と他の先生方に紹介されました。
8番目の着用患者は日本初のWCDによる除細動救命患者になりました。

ICDを植込み、8年経ちました。
生きるために節制するのではなく、無理をしないように、程よく節制して生活を楽しんでいます。

主治医

主治医コメント

弘前大学大学院医学研究科 循環器腎臓内科学講座 准教授  佐々木 真吾 先生



当日の朝、病院エレベータから降り病棟に到着すると、なにやら騒々しい雰囲気が漂っていました。どうも先日WCDを着用した患者さんに電気ショックが作動したらしい。病棟モニターを確認すると、確かに230bpm前後のfast VTに対してショック治療が施され、鮮やかに洞調律へ復しているではありませんか。
慌てて病室を訪れるとベットに普段と変わらぬ様子で腰をかける患者さんの姿が。ベストはなにやら水色の塗料が付着しており、恐る恐るベストを外すと、火傷ひとつなく普段と変わった様子は見られませんでした。
あまりにも鮮やかな救命劇に、皆で感動したことを昨日のことのように覚えています。

そもそもこの患者さんは心筋梗塞発症から再灌流まで数日が経過した梗塞後心不全で、WCD作動時には発症から既に18日が経過した亜急性期でした。本例では最終的に経静脈ICDを植込みましたが、ICD植込み前には菌血症を伴う感染症を併発しており、WCDはICD植込みまでのbridge therapyとしても活躍しました。

当時の主任教授の動物的勘で(失礼)、当施設でも早々にWCDを導入しました。WCDが日本で処方可能になりわずか2か月後に着用された本症例は、本邦初のWCD作動例となり、まさにWCDがその本領を発揮した、最良の適応例となりました。

掲載:2023年04月28日