男性2 患者さんの声-60代男性-

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インタビュー対応:本人

WCDは私からお願いしました

肥大型心筋症による心房粗動に対してカテーテル治療を受けて退院しました。ある日、コロナ禍の運動不足解消のため、テレビで放映していた運動を行っていたところ、突然心臓がグーッと締め付けられ、苦しくて動けなくなりました。もがき苦しみながらもなんとか救急車を呼び、約30分後にようやく到着した救急車内でAEDによる除細動治療を受けて、一命を取り留めました。
私は10年前から血液疾患の難病を患っており、赤血球と血小板の輸血を繰り返してきました。そのため、先生から今後の治療方針について、薬で血小板を増やし、手術できる状態になったらS-ICDを植え込みましょう、とお話がありました。その際に、服薬期間の致死性不整脈をプロテクトする目的でWCDを着用する選択肢があることを知りました。
家で心臓が苦しくなったときには「もう死ぬ」「もう終わりだ」と何度も思いましたから、是非着用させてくださいと私からお願いしました。

一瞬であのひどい苦しみから解放されました

WCDを着用して自宅に帰りました。退院して間もないある朝、突然心臓がドクドクドクッとなり、WCDからアラームが鳴り始めました。意識はあったので、レスポンスボタンを押して除細動を止めました。
しかし心臓はまだ苦しく、再びアラームが鳴り、レスポンスボタンを押して除細動解除、を繰り返しながら救急要請しました。私の場合はずっと意識があり、心臓は苦しいままです。本当に苦しいのです。到着した救急車内でもレスポンスボタンを押して除細動解除を繰り返していましたが、救急車に乗った安心感と、苦しくてたまらない状態で何度も除細動解除を繰り返した疲労で、救急隊員からの質問に答えているときに注意が散漫になりレスポンスボタンを押し忘れてしまいました。
体が一瞬浮き上がり、心臓にすごい衝撃がありました。電気ショックが作動したのです。「あ、押し忘れた」と思ったら、心臓が正常に戻っていました。
一瞬であのひどい苦しみから解放されました。
レスポンスボタンを押し忘れたのですが、結果的にはよかったですよ。本当にずっと苦しく、救急車内で脈も血圧も測れない状態でしたが、それが一瞬で解消されましたから。

WCDがなかったら死んでいました

病院に再入院したのち、WCDを着用して一時退院しました。保険適応の限度内で着用できる期間いっぱい着用し、血小板の数が増えるのを待ちました。そして、無事にS-ICDの植込み手術を受けました。

血液の難病を患った10年前に余命2年と言われました。
今回もダメかなと思いましたが、WCDで運よく助けていただきました。
WCDを着用していなかったら、死んでいました。
命を長らえたから、S-ICDの植込みができました。
ありがとうございました。

主治医

主治医コメント

大阪赤十字病院 心臓血管センター 循環器内科 副部長 牧田 俊則 先生



本症例はもともと、肥大型心筋症を基礎とした心房粗動に対するアブレーションを行っていた患者さんで、フォロー中、自宅で持続性心室頻拍をきたして救急入院となりました。
基礎疾患を考慮し、長時間心臓の負荷が持続することにより血行動態が破綻しうることからICD植込みの適応と考えられましたが、もともと、再生不良性貧血で血液内科の治療を受けており、血小板数も極端に少ないことから手術に伴う出血リスクが非常に高いと考え、まず血液内科で血小板減少に対する治療を先行して行い、安全性が確保できたところで手術をする予定にして、その間WCDを導入することにしました。
日本循環器学会の不整脈非薬物治療ガイドラインにおけるWCDの適応では、”ICDの適応があるが、他の身体的状況によりただちに手術を行えない症例”に該当します。
WCD装着期間中に実際に心室頻拍発作を起こし、当初意識があったことからレスポンスボタンを使用して作動を回避していましたが、最終的に作動により心室頻拍が停止しています。
その後再入院のうえ内服調整をし、最終的に血小板数の増加を待って、S-ICDを無事に植え込むことができました。

掲載:2022年02月04日